本研究は、腫瘍マーカとしての新規テロメラーゼ分析法の開発を主とし、さらにその方法を用いてのiPS細胞の判定ならびに創薬的制癌剤スクリーニング法への適用を目的とする。本分析法は、腫瘍細胞由来のテロメラーゼ活性をテロメア修復反応で生じるピロリン酸に着目し、これをピルビン酸ホスフェートジキナーゼ(PPDK)によりATPに変換、次にホタルルシフェラーゼ生物発光により検出することを原理とする。この方法は、従来法で用いる電気泳動や蛍光検出の操作は無く、迅速で簡便にテロメラーゼ活性が測定可能である。本研究は、がんの臨床化学ならびに再生医療などの基礎研究において有用な分析法として利用されるものと考える。具体的な本年度の研究項目を以下に示す。 1.生物発光テロメラーゼ活性測定の至適条件の設定:昨年度開発した測定法の特異性、高感度化、より高い再現性を得るために、至適条件の再設定を行い、がん細胞1個による測定を可能とした。 2.本法の特異性と精度向上を目指し、PCRにおけるプライマーの再設定とPCR諸条件について、発光法と独自に開発したマイクロチップ電気泳動法にて確認し、より精度の高い方法を開発した。 3.本法の応用として、ヒト腫瘍継体細胞(繊維芽細胞種HT1080とすい臓がん細胞株MIA capa2)を用いて、テロメラーゼ活性の測定を行った。これら細胞種はコントロールと比べより高い発光を示した。これにより本法の臨床ならびにヒトiPS細胞への応用が可能と思われる。
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