研究課題/領域番号 |
22590541
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
桝田 緑 関西医科大学, 医学部, 講師 (50173753)
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キーワード | 臨床検査 / ELISA / CD16 / マクロファージ / 可溶性FcγレセプターIIIa |
研究概要 |
lgGレセプターIII(Fc γRIII:CD16)には、NK細胞とマクロファージ(Mφ)に発現しているIIIa型と,好中球に発現しているIIIb型があり、両者とも細胞の活性化によって細胞表面から放出され、可溶型(sFc γRIII)として血漿中に存在している。すなわち、これら可溶型を個々に測定することにより、生体内での好中球,MK細胞あるいはMφの活性化を知ることができる。そこでIIIa型、およびMφ由来のIIIa型に特異的なモノクロナル抗体を作成し、血漿中のsFc γRIIIaおよびsFc γRIIIaMφを構築した。さらに、科学発光系を利用して約80倍の高感度化に成功した。3種のsFC γRIIIS測定系の感度差より、正常プール血漿に含まれるsFcγ RIIIaは大部分がNK細胞由来、総sFC γRIIIは大部分が好中球由来であった。現在、これら可溶型の絶対値を算出するために、リコンビナントsFc γRIIIaを精製中である。 動脈硬化症をきたすプロセスでは、特に酸化変性LDLがMφに際限なく取り込まれて動脈硬化の初期病変である泡沫細胞の集積をもたらし、ついには多量の脂質を含む不安定なプラークとなる。sFc γRIIIaMφ測定が生体内におけるMφ活性を表すことに着目し、血漿sFc γRIIIaMφを測定したところ、健常者では加齢とともに増加した。成人病検診症例では動脈硬化症のリスクファクターが増すに従い増加し、頸動脈エコー検査の結果と非常によく相関した。頸動脈エコー検査施行患者では低エコープラーク群が最も高値を示し、石灰化の進んだ高エコープラーク群は両プラーク混合型、プラーク無し、異常所見無しの群よりも低値を示した。虚血性心疾患(CAD)症例では明らかな高値を示し、冠動脈の有意狭窄症数が増すに従い増加した。また、糖尿病併発例では、非酸素的糖化反応の影響によりsFc γRIIIaMφ量が見かけ上低めに出る傾向が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
順調に、心筋梗塞発症前の虚血性心疾患や脳梗塞疑いで頸動脈エコー検査受診および下肢動脈エコー検査受診の患者血漿が集まり.その中の3種のsFc γRIII量が測定出来いる。引き続き、例数の増加に勤めたい。標準物質のリコンビナントsFc γRIIIaφの作製に関しては苦戦しているが,予め予想の出来たことであり,引き続き挑戦を続ける。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度も引き続き、心筋梗塞発症前の虚血性心疾患や脳梗塞疑いで頸動脈エコー検査および下肢動脈エコー検査受診の患者血漿中の3種のsFc γRIII量を測定する。これらの値とエコー検査の結果と比較検討することにより、sFc γRIIIaMφ測定の不安定プラーク検出における有効性を検討する。また、腎生検施行により採取した腎組織の一部を用い、MKGR14にて免疫染色し、病理組織学的に種々の程度の動脈硬化病変部におけるsFc γRIIIaMφ発現量の変化を検討する。
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