1実施計画に従い、セレクション法、発現誘導時間、大腸菌溶菌条件、ライブラリー作製法の検討を行って、Hishot法の標準プロトコルを確立した。 2Hishot法を用いて、抗体、またはインテレクチン-1に結合するポリクローナルなペプチドプールを得ることができた。しかし、結合ペプチドの分子クローンの単離は困難で、結合ペプチドを抗体の代わりとしてWestern blottingや免疫染色等で使用することはできなかった。 3そこで、抗体の可変部領域のペプチドを利用したHishot法で人工的に抗体作製を試み、インテレクチン-1、またはTNF-αに特異的に結合する抗体フラグメントの分子クローンの単離に成功した。 4また、ELISAおよび免疫組織染色で陽性対照として用いることができる抗インテレクチン-1モノクローナル抗体を樹立し、インテレクチン-1が悪性胸膜中皮腫のマーカーとなり得ることを示した。また、インテレクチン-1が病理組織マーカーとして検査の場で使用し得る実戦的なモデル抗原分子であることを確認した。 標的に結合し、抗体の替わりとなる新規結合ペプチドのクローニングには至らなかったが、3の成果により、Hishot法を用いて、人工的にモノクローナル抗体を作製する技術の開発に目処がついた。Hishot法は安価に容易に迅速に実施可能な技術であり、本法によりモノクローナル抗体が作製できれば、動物免疫によるモノクローナル抗体作製法に替わる抗体作製のスタンダードとなり得る。 現在、得られた分子クローンの完全抗体化を試みるとともに、より有用な性質を持つ抗体の取得を目標に、作業工程の見直しと改良を進めている。
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