研究概要 |
本研究の目的は、メタボリック症候群から動脈硬化症にかけての全身的な代謝異常と血管病変に関わる遺伝因子および遺伝因子と環境因子の交互作用を明らかにする事により、メタボリック症候群および動脈硬化症の発症・進展の早期予防に向けて基盤となる遺伝情報を創成することである。本年度はゲノムワイド関連解析(GWAS)や候補遺伝子法で糖尿病および高血圧と関連することが発見された遺伝子を日本人集団の職域コホートで解析して、エネルギー摂取量、塩分摂取量、日常的運動量などのライフスタイル因子との交互作用を検討した。また複数の遺伝子多型がどのように代謝的表現系に影響を与えるかを検討した。その結果、ABCA1,ACADSB,ATP2B1,CDH13,GREB1,COMT,CYP11A1,CSK,CYP11B2,CYP17A1,PTGIS,PTK2Bの12高血圧感受性遺伝子のSNPを用いる事によって、これらが相加的に収縮期および拡張期血圧をコントロールしていることを明らかにした。またCOMT遺伝子多型に関しては単独で、エネルギー摂取量と交互作用を持って血圧レベルを上昇させる事が明らかとなった。以上の事は、メタボリック症候群の種々の表現形質における複数の遺伝子がリスクファクターであることを確認するとともにこれらを捉える事により、より正確に発症リスク群を割り出す可能性があることを示唆している。
|