研究課題/領域番号 |
22590550
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
平田 美由紀 九州大学, 大学院・医学研究院, 助教 (30156674)
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研究分担者 |
田中 昭代 九州大学, 大学院・医学研究院, 講師 (10136484)
大前 和幸 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (60118924)
田中 茂 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 教授 (60171758)
中野 真規子 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (70384906)
米本 孝二 久留米大学, バイオ統計センター, 講師 (90398090)
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キーワード | インジウム / 健康影響 / 生物学的モニタリング / 肺障害 / 血液 / 尿 |
研究概要 |
【目的】インジウム作業者の毛髪を採取し、作業中のインジウム毛髪外部付着について検討した。 【方法】インジウムリサイクル事業場労働者28名の毛髪を始業前と終業時に採取し、酸灰化後にICP-MSにより毛髪インジウム(In)濃度を測定した。また、毛髪採取日に採血を行い、血清In濃度を測定した。エアシャワー、シャワー洗髪後に毛髪を採取し、除去効果について調べた。 【結果】1.毛髪Inと血清In:インジウム取扱い作業者および直接非取扱者で管理職を含めた28名の毛髪In濃度は作業前後でいずれもppm(μg/g)オーダー単位であり、作業前と作業後の平均濃度は、37.5、148.0μg/gであった。28名全員において作業前より作業後で毛髪濃度は高値であった。28名の平均血清In濃度は2.7ng/mlであり、始業前の毛髪In濃度と相関は認められなかった。2.作業別の毛髪In濃度の特徴:電解・溶融作業者の毛髪In濃度はITO粉砕作業者に比較して作業前の毛髪In濃度は高く、ITO粉砕作業者では毛髪In濃度は作業前値に比べて作業後では著しく高値を示した。3.作業後のエアシャワー等のIn除染効果:作業後のエアシャワーや洗髪後の毛髪In濃度は作業後の毛髪In濃度に比べ低くなったが、濃度はppmオーダーであった。 【考察・まとめ】毛髪で検出されるインジウムは血液から移行したものと外部付着の二つが考えられる。今回は毛髪を酸分解後に測定したので内部移行分と外部付着分を区別することはできないが、今回検出された毛髪Inはほとんどが外部付着しているものと考えられた。インジウム作業内容によって、毛髪へのIn付着程度が異なり、粉砕等の粉じん曝露と電解・溶解工程でのミスト曝露では毛髪吸着メカニズムが異なることが示唆された。エアシャワーや洗髪により毛髪に付着したインジウムの除去効果が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度実施計画で提示したインジウムの生物学的モニタリングを実施した。血清インジウム濃度と毛髪インジウム濃度では相関関係は認められず、インジウム非取扱者及び過去インジウム曝露者の毛髪インジウム濃度はppb(ng/g)オーダーであったため、現在インジウム作業者で検出される毛髪インジウム濃度は体内移行よりも主に外部吸着による寄与が大きいと考えられた。毛髪に付着したインジウムは作業環境中のインジウム濃度を反映していると考えられ、環境・生物学的早期モニタリングの指標として有効であることが明らかになり、当初の研究目的を達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
毛髪インジウム濃度が環境・生物学的早期モニタリングとして有効であることが明らかになったため、本年度はインジウム作業形態別の毛髪インジウム濃度の評価、インジウムの毛髪付着防止対策の方法の開発、作業環境中のインジウム濃度と毛髪インジウム濃度との相関について検討を行う。
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