研究概要 |
本研究では、動脈硬化の経時変化とそれに関連する環境・宿主要因を明らかにするため、あまみ長寿地域における日本多施設共同コホート研究(J-MICC study)で集められた疫学情報と血液検体、および独自に調査した虚血性心疾患、脳血管疾患の代理マーカーとしての心臓足首血管指数(CAVI Cardio-ankle Vascular Index)を用いて解析を行った。 平成17~18年度の第一次調査と平成22~23年度の第二次調査の5年間の経時変化が比較可能な1,850名(34~69歳)について、既知の動脈硬化危険因子と動脈硬化進展危険因子である炎症に関する7つの遺伝子、CD14, ICAM-1, IL-6, IL-10, MCP-1, NF-kB1, TNF-αの一塩基変異多型(SNPs)とCAVI値との関連について性、年齢群ごとに解析を行った。第一次調査のデータを用いた横断的研究における重回帰分析では高血圧はどの年齢群においてもCAVIとの関連を認めたが、脂質異常症は高齢群で、耐糖能異常は女性でより明らかな関連を認め、性、年齢で異なる結果となった。 SNPsとCAVI値の比較では、男性においてCD14 C-260T多型のCC型でCAVI値がTT型やCT型より低く、他のSNPsの各多型に比べても最も低値であった。動脈硬化危険因子を調整した重回帰分析においても、男性でCD14 C-260T多型(CC/CT/TT)とCAVI値に正の関連(P=0.002)を認め、これは34-49歳の若年群でより明らかであった(P=0.004)。他のSNPsではCAVI値との関連が認められなかった。5年間の経時変化に関する縦断的研究ではCAVI値の変化が小さく、明らかな関連は認められなかった。これらの結果よりCD14 C-260T多型は若年群男性において動脈硬化の進展予防に関与している可能性が示唆された。
|