研究概要 |
【目的】カーバメイト系農薬の免疫系に対する影響の機序を明らかにすることは、予防医学・社会医学上極めて重要であるが、現状では免疫系に対する影響の機序は解明されていない。そこで、本研究では、まずカーバメイト系農薬による免疫系の主役であるNK(natural killer)、LAK(lymphokine-activate killer)及びCTL(cytotoxic T lymphocyte)細胞活性への影響について検討した。 【材料と方法】 1.これまでの研究では人NK細胞株NK-92MI細胞が典型的NK細胞の機能を有することを実証したので(Li et al.2006,2007)、本研究ではNK細胞としてNK-92MI細胞を用いた。 2.CTL細胞はマウスの脾細胞をYAC-1細胞で120時間感作して作成した(Li et al.2002)。 3.LAK細胞は人末梢血リンパ球をIL-2存在下で72時間培養して得た(Li et al.2002)。 4.カーバメイト系農薬はジラム(Ziram)を用いた。 5.In vitroにおいて0.03125~4μMのジラムでNK、CTLとLAK細胞を1~4時間処理し、経時的にNK、CTL及びLAK活性を測定し、ジラムによるNK、CTL及びLAK活性への影響を検討した。 6.NK及びLAK活性測定はK562細胞を標的細胞とし、CTL活性測定はYAC-1細胞を標的細胞とし、51Cr放出率の算定による細胞傷害法を用いた(Li et al.2002,2006,2007)。 【結果と考察】ジラムが処理量と処理時間に依存してNK活性を抑制することを明らかにした。またジラムが量に依存してCTL活性及びLAK活性を抑制することも明らかとなった。NK細胞が最もジラムの影響を受けやすい。今後はジラムによるNK、CTL及びLAK活性抑制のメカニズムを検討していく。
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