我が国では新たな石綿の利用が全面禁止されたが、今後は中皮腫患者数の増加が懸念される。しかし、明確な早期中皮腫の診断法や標準治療法は確立されておらず、中皮腫診断法および治療法の開発が急務である。我々は、5-aminolevulinic acid(ALA)の腫瘍集積性を応用し、ポルフィリン(Por)代謝物を用いたスクリーニング法と光線診断法(photodynamic diagnosis;PDD)の有効性を明らかにした(挑戦的萌芽研究;初期中皮腫に対する革新的な診断法および治療法の開発 平成20-21年度)。本研究は中皮腫でのPDD技術を向上させ、光線力学治療法(photodynamic therapy;PDT)の検討項目を精査し発展させるため、ALA投与量と中皮腫集積の至適時間、取り込み、Por代謝物の蛍光強度、中皮腫発症とALA投与後の尿中および血液中Porクリアランス、ALAおよびレザフィリン(LS)併用投与についてラットによる動物実験を実施した。その結果、ALA投与量では100mg/kgを1度、2時間後に200mg/kgを1度の2回、初回投与から6時間後にALA取り込み量が至適投与量・時間であると推定できた。また、中皮腫からALA代謝物と推定されるコプロPorIおよびIII、プロトPorIXが高濃度で検出された。一方、尿中Porは中皮腫発症によって明らかな違いを見出した。これらの解析を行った結果、中皮腫発症と関連性が高いメソテリン濃度とPorとの間に関連性を見出した。また、LS併用投与では、中皮腫へのLS取り込みを十分に確認出来ず、PDT治療には問題のあることが明らかになった。この原因として、ALAとLSの中皮腫への取り込み時間の違い、ALAによる活性酸素の誘導が限定的であったことが推察され、特に腫瘍細胞である中皮腫での至適濃度に時間的な差が生じるためであろうと推察できた。
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