ベトナム共和国ダナン市の高濃度ダイオキシン汚染地域と対照地域の地域病院にて出生した新生児(汚染地域150名、対照地域80名)を登録、コホート集団とし、生後1ヶ月、4ヶ月時に追跡調査を行ない、体格および脳神経発達についてデータ収集を行なった。また、汚染地域については、生後1ヶ月時に収集した母乳中のダイオキシンの17の異性体についての測定を終了し、体格および脳神経発達尺度と母乳中ダイオキシン濃度との関連性について検討した。 その結果、(1)出生時の頭囲腹囲比は汚染地域の男児で有意に低く、汚染地域出生児の中では、母乳中HxCDD濃度が高いほど低かった。(2)出後1ヶ月時の男児の体重および肥満度は、汚染地域で対照地域と比べ有意に低く、汚染地域出生児の中では、母乳中PCDDsや全ダイオキシン濃度の高いほど低かった。(3)出生後1ヶ月間の体重の増加量は、母乳中の多くの異性体ダイオキシン濃度および全濃度が多くなるにつれ少なくなることが、男女児共に観察された。また、生後4ヶ月時にベーリー発達尺度を行いて、認知・言語、情動、および運動発達についての評価を行った結果、(1)言語発達、特に表出言語のスコアが対照地域と比べると汚染地域で有意に低下していた。(2)運動機能についても、特に粗大運動のスコアが汚染地域で低下していた。(3)汚染地域内では、母乳中全ダイオキシン濃度が高いほど、認知機能、微細運動のスコアが低かった。これらのことから、母乳中ダイオキシン濃度が高く胎内暴露および出生後の母乳による曝露の多い児の出生後早期の成長や脳神経発達が抑制されることが示唆された。今後さらなる追跡調査によりダイオキシンの小児への健康影響が明らかにされることが期待される。
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