[研究実施内容] ベトナム共和国ダナン市の高濃度ダイオキシン汚染地域と対照地域の地域病院にて出生した新生児(汚染地域150名、対照地域80名)を登録し、コホート集団として生後1ヶ月、4ヶ月、1歳時に続き、3歳時に追跡調査を行ない、児の体格および脳神経発達についてのデータを収集、データベースを作成した。さらに、両地域の母乳中のダイオキシンの17の異性体についても測定し、小児の脳神経発達指標と母乳中ダイオキシン濃度を暴露指標としたデータ解析を行った。 [得られた知見] ①4ヶ月の脳神経発達については、汚染地域および対照地域で追跡できた計200名について母乳中ダイオキシン濃度との量効果関係について検討し、TCDD、総毒性等価指数TEQ、乳児ダイオキシン一日摂取量DDIが高くなるにつれ、認知、言語、運動に関する脳神経発達の点数が低い有意に低いことを見出した。②3歳時検査では、総毒性等価指数TEQが高い(75パーセンタイル以上)の児の脳神経発達検査の内、認知や運動の点数が有意に低く、社会情動・適応行動に関する質問票の結果からも、概念的行動や学習に関する項目の点数が低く、日常生活行動にも影響が生じていることが示唆された。③汚染地域についての解析より、井戸水の使用経験や肉や魚、卵の摂取パターンは母乳のダイオキシンの増加に関与しているが、最も寄与の高い因子は居住歴であることを明らかにした。 [意義・重要性] 周産期ダイオキシン暴露の幼児期まで続く次世代影響、特に高次脳機能への影響を明らかにし、ベトナムの現場に適合した汚染対策を実施するための基礎資料を得ることができた。
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