夜勤交代勤務とくに深夜勤務が前立腺の腫瘍性疾患のリスクか否かを前立腺特異抗原PSAを用いて検討した。また、DNAの損傷の指標であり、酸化ストレスマーカーである8OHデオキシグアノシン(8OHDG)の尿中排泄量との関連も検討した。対象は富山県東部の一製造工場に勤務する50歳以上の男性829人で、必要なデータがそろった702人(50歳代584人、60歳代118人)について解析を行った。このうち、事務系職種は150人、現業系職種は552人。現業系職種のうち常日勤者は317人、深夜勤務を伴わない交代勤務者53人、深夜勤務を伴う交代勤務者182人であった。IMRA法によりトータルPSA、フリーPSA、フリー/トータルPSA(F/T比)を測定した。 解析対象者702人中22人がトータルPSA4ng/ml(正常参考値)以上を示した。精密検査の結果前立腺がんと診断されたものはいなかった。有所見率は全体3.1%、50代2.9%、60代4.2%と高年齢群で高かった。事務系職種、現業系(常日勤)、現業系(交代勤務・深夜勤務無)、現業系(交代勤務・深夜勤務あり)の4郡で有所見率を比較したが、50代、60代ともに有意差はなかった。トータルPSAの分布の上位10パーセンタイル値1.6ng/mlをカットオフ値として、職種および勤務体制による4群間で有所見率を比較したところ、50代では現業系で交代勤務・深夜勤務ありが9.2%と最も高率であったが、統計的には有意ではなかった。フリーPSA値、F/T比については平均値を分散分析を用いて比較したが、4群間で有意な差は認めなかった。過去の交代勤務暴露年数との関連も検討したが、有意な関連はなかった。 8OHDGは50代では実測値において現業系の交代勤務が事務系や現業系(日勤)に比べて有意に高値を示したが、クレアチニン補正値は有意差はなかった。
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