遺伝的に均一の同一固体に発症したメラノーマ、良性腫瘍における遺伝子発現量をマイクロアレイで比較、メラノーマで特異的に抑制される遺伝子を検索しメラノーマの診断・予防及び治療に向けた基礎研究を行っている。培養細胞において、メラノサイト系培養細胞では発現量は正常細胞または良性のmelan-aで高発現するが、メラノーマ培養細胞では発現量は非常に低かった。また、良性腫瘍に対し紫外線を照射すると時間とともに発現量が低下する本遺伝子産物を対象にして紫外線による悪性黒色腫の発症機構の解明の基礎知見を得るため、本遺伝子産物の機能解析を行った。 本遺伝子産物の発現がほとんどない悪性黒色腫培養細胞(細胞増殖能、浸潤能、移動能、形質転換能が非常に高いB16F10を使用)に発現させstable cloneを選択し、がん細胞特有な高い増殖能、浸潤能、移動能、形質転換能に関してどう変化するか解析したところ、本遺伝子産物の発現量に比例して細胞の増殖能が低下し、浸潤能、形質転換能も低下することが判った。アポトーシスに関してはある程度発現したcloneは取れるものの、強発現するものはなく、transientな細胞で解析する必要がある。 紫外線による細胞のがん化は紫外線曝露に伴う活性酸素種の生成に起因すると考えられているが、化学物質による活性酸素種の生成においても同様なことが起こるか否かを確かめるために正常細胞(melan-a)に活性酸素種のひとっを曝露したところ、本遺伝子の発現に差は認められなかった。このことから別の活性酸素種または、活性酸素以外の紫外線による影響が本遺伝子発現に関与している可能性が示唆された。
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