平成22年度は、動脈硬化感受性マウスと通常マウスを比較することで、動脈硬化指標となる白血球機能の違いを求めることを目的に研究を行った。臨床的応用を鑑み、末梢血全血中での細胞機能に着目し、血小板と炎症性細胞(好中球・単球)について、複数項目で比較し、相違の有無を観察した。 その結果、対照群マウスと、動脈硬化感受性高脂血症マウス:C57BL/6.KOR/StmSlc-Apoe^<sh1>(以下B6.KOR)の単球の貪食能において差異が認められた。現在、この差異が生じる幾序を明らかにする検討を始めた。 一方、動脈硬化危険因子として糖尿病が知られている。そのモデル動物G-Kラットにおいて、同様に検討したところやはり単球機能の貪食能に変化が認められた。現在、本結果を雑誌論文として投稿中である。 次に、細胞内シグナルの差異を検討したが、現在のところ有意な違いを認めていない。しかし、動脈硬化巣の解析を進めたところ、抗炎症作用を惹起するペプチド(HP-2)をB6.KORに投与すると、動脈硬化巣の改善とリンパ球の亜分画(CD3^+CD4^+CD45RB^<high>)が減少することが判明した。今後、動脈硬化危険因子とリンパ球分画の変化についても着目し、そのシグナルについて解析を実施する予定である。 血小板機能については、白血球と血小板の複合体形成能について変化がある可能性が認められたので、現在検討を進めている。
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