本研究は、大気汚染物質の長期的健康影響を疫学的により正しく評価するために、大気汚染物質への曝露量推定方法を開発することを目的とした。 本年度は、開発された曝露推計モデルの妥当性を検討するために、二酸化窒素の実測調査を実施した。兵庫県東播磨地域(加古川市・播磨町)に居住する学童から調査協力者を募集し、同意を得た75世帯を対象に暖房期と非暖房期の2回にわたり、簡易測定器(フィルタバッジ)を配布して、屋外濃度、屋内濃度、及び学童に装着した携行時の濃度をそれぞれ3日間測定した。同時に調査期間中の屋内環境についての質問票調査を行った。大気汚染常時監視測定局から測定局地点における調査期間中の二酸化窒素濃度を得た。その結果、屋内環境の情報を加えると屋外濃度から屋内濃度を予測することは可能であることが示唆され(日本公衆衛生学会で報告予定)、また、屋外濃度と屋内濃度の比例配分では携行時の濃度を説明できないことが分かった。これは、大気汚染常時監視測定局の数値から個人曝露量の推定を行うためには、本研究とは全く異なる視点からのアプローチが必要であることを意味する。しかしながら、大気汚染常時監視測定局の数値から屋外濃度および屋内濃度を予測する本モデルは、大気汚染の疫学研究に一定の貢献を与えるものと思われる。本研究課題の研究期間は終了しているが、実測データと比較しながら、曝露推計モデルの改良を継続している。最終的なモデルの妥当性について今後、学会や論文で公表予定である。
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