[目的]血小板でのアルコールの作用は明らかでない。我々は、4種類の血小板凝集惹起剤を用いて異なる血小板活性化経路へのアルコールの影響について検討を行った。 [方法]血小板凝集能測定にはSFP変法(modified screen filtration pressure method)による全血凝集測定と共に従来法である透過光式血小板凝集能測定を行った。また血小板刺激にはthrombin、ADPの他に、容量性カルシウム流入(CCE: capacitative calcium entry)惹起を目的としてthapsigarginを使用し、さらにdiacylglycerol (DG)アナログとして 1-oleoyl-2-acetyl-sn-glycerol (OAG) を用いた。 [結果]従来法ではthrombin濃度が0.2 U/ml以上で凝集が認められ、エタノールは血小板凝集を抑制した。一方、全血凝集測定では、エタノールによる血小板凝集抑制はthrombin濃度が0.05 U/mlから認められた。さらに全血凝集では、thapsigarginによるCCEを介する凝集で、エタノールは比較的低濃度(0.5%)から著明な血小板凝集抑制効果を示したのに対し、OAGによるDG依存性カルシウム流入による血小板凝集では、エタノールは高濃度(2%)においてもその抑制効果は軽度であった。thrombin及びADPによる凝集に対するエタノールの抑制効果の程度は、thapsigargin凝集とOAG凝集の場合に見られた抑制効果のほぼ中間のレベルであった。 [結論]エタノールは血小板凝集を抑制した。全血凝集は血小板凝集の検出感度が優れていた。さらに、thapsigarginとOAGによる凝集では、エタノールの影響に差が認められたことより、血小板活性化経路の差異によりエタノール感受性が異なる可能性が示唆された。
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