研究概要 |
本研究の目的は、ナノ粒子のリスクアセスメントや作業現場での管理を行う上で、従来の重量基準濃度による評価基準と、表面積基準による評価基準を比較検討し、より確かな濃度指標を開発することである。方法として、ナノサイズ粒子の表面積による影響について、BET表面積を測定するとともにいくつかの異なる重量濃度にて気管内注入し、経時的な生体影響を多方面より検討することを計画している。本年度は、3種類の二酸化チタン粒子(Amorphous,P25,P90)を使用し、まず、その表面積(BET径)を測定した。Amorphous,P25,P90二酸化チタン粒子の表面積はそれぞれ110,53.8,102m^2/gで、粒径はそれぞれ14,28,15nmであった。これらの粒子を溶媒に十分に分散させた後、8週齢のWistar系雄性ラットに対して、各分画試料をラット1匹あたり1000μgの重量濃度で0.4mlの蒸留水に懸濁し、気管内に単回注入した。解剖は、注入後3日、1ヶ月、のタイムポイントで行い、解剖時に気道からカニューラを挿入し、右肺から生理食塩水を用いて気管支肺胞洗浄を行った。1回につき5-10mlの注入を行い、自然落下にて採取し、計50mlのBALFを回収した。左肺では病理組織標本を作製するため、4%パラホルムアルデヒドで定圧固定を行った。注入後3日のBALF中の総細胞数は、P25>Amorphous>P90の順で増加しており、AmorphousとP25では有意差を認めた。また、注入1ヶ月後の時点では、BAL中の総細胞数は3群ともに3日と比較して減少していた。病理組織については現在検討中であるが、今後、濃度を変えてさらに検討を加える予定である。
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