研究課題/領域番号 |
22590566
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
大神 明 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (40301692)
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研究分担者 |
明星 敏彦 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (00209959)
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キーワード | ナノ粒子 / 気管内注入 / 肺毒性 / 二酸化チタン |
研究概要 |
研究の目的 本研究の目的は、ナノ粒子のリスクアセスメントや作業現場での管理を行う上で、従来の重量基準濃度による評価基準と、表面積基準による評価基準を比較検討し、より確かな濃度指標を開発することである。 研究方法 1.試料 本年度は液相法により生成された二酸化チタン(アナターゼまたはルチル型一次粒径20nm~40nm)の粒径分画を抽出し、BET表面積を測定した。 2.気管内注入試験 8週齢のWistar系雄性ラットに対して、2種類の二酸化チタン試料をラット1匹あたり1.0mgの重量濃度で0.4mlの生理食塩水に懸濁し、対照群は生理食塩水のみ注入する群を含め単回注入した。解剖は、注入後3日、1ヶ月、6ヶ月の3タイムポイントで行った。(合計45匹)解剖時に右肺から気管支肺胞洗浄液(BALF)抽出を行った。左肺は病理組織標本を作製した。 3.病理評価 BALF検体より総白血球数と好中球数を測定し、肺病理標本は、ポイントカウント法にて炎症度評価を行い、各物質による肺への生体影響評価を比較検討した。 結果 本年度までにデータが集まった二酸化チタンナノ粒子は5種類(アナターゼ、ルチル、P90、P25,アモルファス)で、それぞれBET表面積はアナターゼ(102m^2/g)、ルチル(102m^2/g)、P90(102m^2/g)、P25(53.8m^2/g),アモルファス(110m^2/g)であった。これらの粒子を1.0mg/ラット気管内投与した結果では、注入後3日の時点でBALFでは総細胞数がamorphous>P90>P25>>rutile=anataseの順で差が見られ、好中球数ではamorphous>P25>P90>>rutile=anataseの順で差が見られた。また、肺組織の炎症度の解析では限局性の肺胞炎が散見されたがP25>P90>amorphous>rutile>anataseの順で炎症度に差が見られた。しかしながら、これらの現象は注入後3日のみに見られた所見であり、注入後1ヶ月以後は対照群と有意差を認めず、炎症度が経時的に増加する傾向は見られなかった。これらのことより、表面積のみがナノ粒子の毒性を決定する要素ではなく、表面性状あるいは生成方法などの物性因子を考慮して毒性を評価する必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肺組織の病理評価における線維性変化の解析については現在解析中であり、サイトカインなどの測定については予算的な事情もあり計画すべてが達成できているわけではない。しかしながら、対象粒子の物性解析と気管内注入試験はおおむね順調に達成できており、病理評価も大部分が進行しているため。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、病理解析について進めるべき事項について完成を図るとともに、計画の最終年度であるため得られた成果に対する総括を行っていく予定である。
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