研究概要 |
最終年度はラットに対し気管内注入試験を施行した肺組織の病理組織学的検討と二酸化チタンサンプルの結晶子の大きさの計測を行った。 4種類の二酸化チタンナノ粒子[P25(Degussa),アモルファス(Wako)、アナターゼ、ルチル] 1mgWistar系雄性ラットに単回気管内注入し、気管内注入後3日、1か月、6か月の時点で解剖を行った。肺組織はエラスチカ・ワンギーソン染色を行い、ポイントカウンティングにて肺組織のコラーゲン沈着率を計測し肺線維度を評価した。 線維性評価において、P25が最も高いコラーゲン沈着率を示し、注入後6か月時点まで高値の状態が持続していた。化学組成が同じ二酸化チタンナノ粒子において結晶構造や生成法が異なる粒子間で線維性変化に差を認めた。今回もっとも線維化度が高かったP25は他の二酸化チタンナノ粒子と比較してBET比表面積は小さく粒子径は大きかった。また、二酸化チタンサンプル計5 検体試料の結晶子の大きさを、X線回折(XRD)測定により計測した。その結果、1)5検体中4検体の試料の結晶子のサイズはSauter平均径(比表面積径)とほぼ同じであった。一次粒子は単結晶からなっていると思われた。2)気層合成で製造された試料はアナターゼとルチルの両方の結晶子を含んでいた。3)液相で晶析により製造された試料はそれぞれルチルとアナターゼのほぼ単一の結晶系からなっていた。4)製造方法は不明の試料はアモルファスであるが、アナターゼの結晶子も観察された。以上より、生体影響は、ルチルとアナターゼの結晶系の違いより、結晶に質(結晶の複合体、非晶質など)の違いではないかと推論された。
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