Lactobacillus sanfrancisensis#2の培養液から抗カビ活性の高い画分と低い画分を得て、LCMSを用いた差異分析によって抗カビ活性成分の同定を試みた。これまで候補成分と考えていた274と358の分子量を示す成分を別条件で解析した結果、マスクロマトグラムからは有意差が認められなかった。274については今回の分析条件下で9.6分に出現したが、不活性成分の強度が10倍近い強度で出現した。また、358については強度が弱く断定することができなかった。負イオン検出を行ったところ、前年と同様に硫酸成分(97)については有意差が検出されたが、乳酸(89)については有意差が認められなかった。有意差のある1.8分のUVピークについて評価したところ乳酸に相当する成分が重なり、特定できなかった。274前後のピークに有意差のある230と318が観察された。318はエチレングリコールに相当する。230はC12H25N(CH3)2Oの界面活性剤成分の組成に一致しており、その関連物質と考えられる。アミノ酸のLeu(132)とPhe(166)に有意差が認められた。 以上の結果をまとめると、抗カビ活性画分に特異的に検出された成分は、①エチレングリコール、②C12H25N(CH3)2Oの界面活性剤関連成分、③硫酸、④ロイソン、⑤フェニルアラニンの5つである。このうち、①④⑤については、抗カビ性は認められない物質であるので、活性成分の候補物質から除外される。③については、乳酸菌が分泌することが考えにくいことと、さらに、エーテル抽出の操作において脱水剤として硫酸マグネシウムを使用していることから、これが、昨年と今年の両実験において残留物として検出された要因かもしれないので、確認のための精査が必要である。以上の結果より、求めている活性成分は、②の界面活性剤関連成分が候補として残された。
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