紫外線(UV)は、その波長によりUVA(320~400nm)、UVB(280~320nm)、UVC(280nm以下)に分類される。このうちUVBは波長が短く高エネルギーを持つため、一般的に強い皮膚細胞障害を生じる。具体的には、DNA傷害、皮膚がんの発生、活性酸素の産生、細胞アポトーシスの誘導、一酸化窒素の産生などであるが、個体でしか観察できない高次元の機能である血液循環については、これまで報告が見られない。本研究では、ヘアレスマウス(HR-1)に微小循環を長期に渡って観察が可能となるDorsal Skinfold Chamber (DSC)を装着し、皮膚にUVBを照射した際の影響について特に微小循環系に及ぼす影響を明らかにすることを目的として、生体顕微鏡的な研究手法により検討した。 本年度は、UVB照射後短時間(数分以内)のうちにDSC内の細静脈の一部の血管透過性が大きく亢進する現象について、一酸化窒素(NO)合成酵素阻害剤または、活性酸素種(ROS)のスカベンジャーの前投与により濃度依存的かつ顕著な抑制効果が見られることを見いだした。このことから、NOおよびROSが血管の透過性に関与をしていることが示唆された。また、シクロオキシゲナーゼ阻害剤の投与によっても同反応は抑制された。以上の結果は、照射後短時間で起こる現象において、いわゆる紅斑反応の発生機序として提唱されているシグナルカスケードと同様のカスケードが作用している可能性が高いことを示した。これらの知見をまとめ、論文発表を行った。 今後は、反応カスケードの詳細な機序、および、NOやヒドロキシラジカルの皮膚における産生部位や産生能の局在などに関して研究を進めるとともに、かつ反応を抑制する方法について検討し、新たな知見を得ること目標とする。
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