研究課題/領域番号 |
22590570
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研究機関 | 国立保健医療科学院 |
研究代表者 |
牛山 明 国立保健医療科学院, 生活環境研究部, 上席主任研究官 (60291118)
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キーワード | 衛生 / 環境生理 / 紫外線 / 動物 / 微小循環 / 抗酸化作用 |
研究概要 |
太陽光に含まれる紫外線B波(UVB)は、オゾン層の減少に伴い地表への到達量が増加しており、UVBからの保護は保健衛生学上、非常に重要である。これまでの研究で皮膚組織並びに微小血管床をリアルタイムにイメージングできる観察窓(Dorsal Skinfold Chamber;DSC)を装着したヘアレスマウスを用いて、皮膚にUVBを照射した際に即時性に(照射後数分以内に)一酸化窒素(NO)と活性酸素種(ROS)が発生し血管拡張等の生理作用をもたらすことが間接的に示されている。本研究では蛍光指示薬を用いて、NOとROSの生体内リアルタイムイメージングを行い、その発生機序や皮膚における産生部位などについて調べた。蛍光指示薬についてはin vitro実験では多くの活用例が示されているものの、動物の生体内イメージングではほとんど例がなく、様々な指示薬ならびに投与の方法を検討し今年度は以下の点を明らかにした。 NOの産生イメージングにはDiaminofluoresucein-2 diacetate(DAF-2DA)を尾静脈から投与することが最適であった。設定した条件下において、紫外線を照射すると即時的に血管径80μm程度の細動脈の血管内皮で局所的にNOが産生されることがわかった。 ROSの産生イメージングには実験直前にDihydrorhodamine 123(DHR)をDSC内に滴下し過剰な試薬を洗浄除去する方法が最適であった。設定した条件下において、紫外線を照射すると即時的に皮膚組織でROSが産生すること、またこれは抗酸化物質のアスコルビン酸やαトコフェロールをマウスに事前投与すると抑制されることがわかった。 以上より、本年度は紫外線B波照射直後の皮膚での生理環境の変化を蛍光イメージングでリアルタイムに捉えることに成功し、NOとROSの産生部位を特定し、その機序を明らかにする基礎的な知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
蛍光イメージングをおこなうための指示薬については当初想定していた試薬は溶媒の生体毒性などの問題が認められたため、別の指示薬を検討せざるを得なかったが、他の指示薬で良好な結果を得ることができた。また、抗酸化作用をもつ物質を事前投与することで、紫外線影響の予防効果とみられる予備的な知見を得られたが、これに関しては当初の計画よりも早めに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
DHR、DAF-2の反応の特異性を調べるために、マウスに'あらかじめROS消去剤、NO合成酵素阻害剤を投与しイメージングの特異性を明らかにする。紫外線刺激によって、一般的にはROSやNOがIL-1を回するシグナル伝達を経て誘導型のシクロオキシゲナーゼ(COX-2)の発現を誘導しているという仮説があることから、COX2阻害剤の投与実験をおこなうことで紫外線反応が抑制できるか否かを確かめる。 これらの研究活動によって、UVB照射後短時間のうちに起こるシグナル伝達経路を明かにした上で、保健衛生的にUVBの影響を予防するための方策について本動物実験モデルを用いて検討をする。具体的には、ビタミンE誘導体、ビタミンC、カテキン、ポリフェノールなどの抗酸化物質の投与、塗布などをおこない、その摂取効果、薬理効果について本チャンバーモデルを用いて検討をすすめ、紫外線防護に関しての基礎的知見を得ることとする。
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