B波紫外線(UVB:波長280~320nm)による健康影響は公衆衛生上の大きな問題である。我々はこれまでに、紫外線照射後数分から数時間のうちに、血管拡張、透過性の亢進、白血球-内皮相互作用亢進などの即時性反応を報告した。 今年度は、蛍光指示薬を用いて活性酸素種(ROS)と白血球内皮相互作用について検討した。ROSの産生イメージングには実験直前にDHR 123をDSC内に滴下し過剰試薬を洗浄除去する方法が最適であった。設定した条件下において、紫外線照射より即時的に皮膚組織でROSが産生することを蛍光シグナルの増強として捉えることができた。またこのシグナルは活性酸素消去剤の投与により抑制されることから、活性酸素特異的なシグナルであることが示唆された。 UVB照射後に認められる粘着白血球数の増加は紫外線照射後6時間で有意な増加が認められた。この現象は抗P-selectin抗体をマウス血管内に事前投与し、UVB照射をおこなった場合に阻害された。このことからUVBによる粘着白血球数の増加は、UVB照射後に血管内皮上に発現するP-selectinが関係している可能性が明らかになった。 また、UVB照射に関連して増加するROSの蛍光シグナル、および粘着白血球数の増加が、抗酸化物質の事前投与で予防できるかを検討した。抗酸化物質としては、(±)-α-トコフェロール(ビタミンE)、緑茶由来カテキン混合物を検討した。UVBによりDHR123の蛍光輝度値が対照群に比べて有意に上昇するが、ビタミンE投与群では対照群に比して蛍光輝度値の上昇が抑制された。またカテキン混合物投与群でも同様であった。また、UVB照射による粘着白血球数の増加について、ビタミンE投与群、カテキン混合物投与群ではその増加の抑制が認められた。以上より抗酸化物質の投与は紫外線の初期反応に対して充分な予防効果があることが示唆された。
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