研究概要 |
異なるHIV-1株にsuperinfection(重複感染)すると病態の進行が早まることや、薬剤耐性株のsuperinfectionによる治療効果の低下などが報告されており、superinfectionが感染者の病態管理や治療に大きな影響を及ぼすことから、その実状把握は重要な課題である。本研究では、大阪近郊において遺伝子的にクラスターを形成している流行HIV-1株に着目し、それらに特異的なプライマーを用いることにより簡便にHIV-1のsuperinfectionをスクリーニングする方法を確立することを目的とする。 H22年度はH19-21年に当所で実施されたHIV確認検査の陽性検体についてenv領域のシークエンスを行ない、系統樹解析により大きなクラスターを形成する2つのグループ(A, B)を選択し、それぞれのクラスターに属するHIV-1株を特異的に増幅できるプライマーを構築した。グループA, Bに属する検体とグループ以外のHIV-1株を混合して重感染を模したサンプルを作製し、PCRの最適条件及び検出感度を検討したところ、A, Bどちらのプライマーも約2コピーの混在まで検出できることがわかった。そこで、H21年の確認検査検体およびフォローアップ患者検体のうち、通常のプライマーではA, Bどちらのグループにも属さないことが明らかなサンプルを用いて、血漿中のウイルスRNAサンプル60例、リンパ球中のプロウイルスDNAサンプル32例について重感染の検出を試みたが、全例ともグループA, Bの重感染は認められなかった。H23年度は、スクリーニングを継続すると共に、流行株クラスターの再検討と特異プライマーの再構築を行なう。また、B以外のサブタイプ(CRF01_AEなど)の重感染についても検討を行う予定である。
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