研究課題/領域番号 |
22590573
|
研究機関 | 大阪府立公衆衛生研究所 |
研究代表者 |
森 治代 大阪府立公衆衛生研究所, 感染症部, 主任研究員 (20250300)
|
研究分担者 |
小島 洋子 大阪府立公衆衛生研究所, 感染症部, 主任研究員 (70291218)
川畑 拓也 大阪府立公衆衛生研究所, 感染症部, 主任研究員 (80270768)
|
キーワード | HIV-1 / superinfection / 重複感染 / 特異プライマー |
研究概要 |
異なるHIV-1株にsuperinfection(重複感染)すると病態の進行が早まることや、薬剤耐性株のsuperinfectionによる治療効果の低下などが報告されており、superinfectionが感染者の病態管理や治療に大きな影響を及ぼすことから、その実状把握は重要な課題である。本研究では、大阪近郊において遺伝子的にクラスターを形成している流行HIV-1株に着目し、それらに特異的なプライマーを用いることにより簡便にHIV-1のsuperinfectionをスクリーニングする方法を確立することを目的とする。 H23年度は、新たにH22年の確認検査陽性検体の中でクラスターを形成する流行HIV-1株に特異的なプライマーG(env領域)およびCRF01AEに特異的なプライマーgagAE(gag領域)を構築した。重感染を模した混合サンプルを用いてPCRの最適条件及び検出感度を検討し、共に約2コピーの混在まで検出できることを確認した。 そこで、これら新たに構築したプライマーおよび前年度構築した大阪近郊の流行HIV-1特異プライマーA、Bを用いて、フォローアップ検体30例のリンパ球中のプロウイルスDNAについて重感染の検出を試みたが、全例とも重感染は認められなかった。しかしながら、これら検体のプロウイルス量を測定し、1回のPCRにかかるコピー数を計算したところ、比較的プロウイルス量が多いと考えられる未治療患者でも10~30コピー、治療経過が良好な患者ではせいぜい数コピー程度しか検討していないことがわかり、重複感染を検出するには1検体あたり1回のPCRでは不十分であることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
重複感染が検出できない理由として、1)着目したクラスターが適切でない、2)検討するサンプルが適切でない、3)本研究のターゲット集団では重複感染が発生していない、などが考えられるが、実際にクローニング実験の結果からは重複感染が疑われるものがこれまでに数例認められていることから、主な理由は1)または2)であると思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
使用するサンプルとしては、fitnessの優れたウィルスがメジャーとなる血漿中のウイルス1RNAよりも過去の感染履歴が残っているプロウイルスDNAが適当であると思われるが、現状では検討量が不十分と考えられるので、今後は1検体あたり少なくともプロウイルス100コピー程度を目安に複数回のPCRを実施する。より重複感染のリスクが高いと思われる、他の性感染症(B型肝炎や梅毒など)の既往歴がある検体を中心に検討を進める。また、必要に応じて流行株クラスターの再検討と特異プライマーの再構築を行なう。
|