研究概要 |
異なるHIV-1株にsuperinfection(重複感染)すると病態の進行が早まることや、薬剤耐性株のsuperinfectionによる治療効果の低下などが報告されており、superinfectionが感染者の病態管理や治療に大きな影響を及ぼすことから、その実状把握は重要な課題である。本研究では、大阪近郊において遺伝子的にクラスターを形成している流行HIV-1株に着目し、それらに特異的なプライマーを用いることにより簡便にHIV-1のsuperinfectionをスクリーニングする方法を確立することを目的とする。 H24年度は、大阪近郊の流行HIV-1(グループA、B)を特異的に検出するプライマーおよびCRF01_AEに特異的なプライマーを用いて、主にフォローアップ患者のプロウイルスDNAについて検討した。通常のプライマーではA, Bどちらのグループにも属さないことが明らかなフォローアップ患者検体の中から、よりHIV-1重複感染のリスクが高いと思われる他の性感染症(B型肝炎や梅毒など)の既往歴がある検体を中心に30例を選び、リンパ球中のプロウイルスDNAについて100コピー以上/1検体を解析できるよう複数回のPCRを行い、重複感染の検出を試みた。 その結果、1例においてグループBのクラスターに属する株が微少集族として検出された。グループB株は大阪近郊で特に大きなクラスターを形成しており、例数を増やしてより詳細な解析を行うことにより、さらなる重複感染例が見つかる可能性が示された。一方、今回の検討ではサブタイプBとCRF01_AEの重複感染が疑われる検体は認められなかったが、過去の検体の中にはクローニングによりB/AEやB/Cの重複感染が明らかになった例も存在することから、本法を用いてもさらに例数を重ねることによりB/AEの重複感染を検出することは可能であると考えている。
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