研究課題
第二次東北慢性心不全登録(CHART-2)研究は、平成18年10月から開始された慢性心不全前向きコホート研究である。心血管疾患は人口構成の高齢化とともに急速に増加しており、日本で死因の第一位を占める悪性新生物と心血管疾患の関連を明らかにすることは、心血管疾患のリスク層別化や予後改善に大変重要な意義がある。平成23年度の調査では心不全症状をもつ症例(N=4,732)のうち、悪性新生物の既往と予後の性差に関する検討を行った。男性では悪性新生物の既往例は13.3%で、胃癌(31.3%)、大腸癌(15.3%)が多かった。女性では悪性新生物の既往例は11.2%で、乳癌が最も多く(24.1%)、次いで大腸癌が多かった(13.0%)。男女ともに大半の症例は手術を受けていた。男性では、悪性新生物の既往のある症例は有意に高齢で心房細動の合併が多く、貧血や低アルブミン血症を合併しBNPは高値であった。一方女性の悪性新生物の既往例は低アルブミン血症、BNP高値を認めたが貧血は認めなかった。平均約2.5年の追跡で全死亡に対する生存曲線では男性・女性ともに悪性新生物の既往例は有意に予後不良であった。しかし、心不全の予後に影響する因子で補正したCoxモデルでは、男性では悪性新生物の既往例の全死亡に対するハザード比は、悪性新生物の既往のない症例に比較し1.54倍であったのに対し、女性ではハザード比に有意差は認めなかった。男性では消化管由来のMTが多く栄養状態不良や貧血といった因子が予後に影響したことが予想される。本研究では、これまで悪性新生物の新規発生イベントを調査しており、今後さらに調査を継続することで、心血管疾患治療薬と悪性新生物の関連や予後に関する検討を進めることが可能である。
2: おおむね順調に進展している
本研究は登録数10,219名の大規模コホート研究であるが、平成23年11月までの時点で追跡困難例が105例(1.0%)と高い追跡率を維持している。そのため、心血管疾患におけるリスク層別化や、本研究における悪性新生物と心血管疾患に関する調査について信頼性の高いデータを発信できると確信している。今後は追跡中に発症した悪性新生物と心血管疾患について重点的に調査する。
本研究では悪性新生物の既往のある心血管疾患症例は予後不良であることが示した。今後は心血管疾患症例における新規悪性新生物発症について調査することで、心血管治療薬の悪性新生物新規発症に与える影響や悪性新生物が心血管疾患に与える影響を明らかにすることを目標に研究を進める。本研究の研究協力施設のうち、東日本大震災で甚大な被害を受け追跡調査が困難な状況となっている施設が数施設ある。一人でも多くの症例を追跡できるよう各施設の担当者と緊密な連絡をとり、さらに行政などの協力を得て情報収集に努めている。
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