研究概要 |
第二次東北慢性心不全登録(CHART-2)研究は、平成18年10月から開始した心不全前向きコホート研究である。心血管疾患は高齢化とともに急速に増加しており、日本で死因の第一位を占める悪性新生物と心血管疾患の関連を明らかにすることは、心血管疾患のリスク層別化や予後改善に大変重要な意義がある。 平成24年度の調査では、心血管疾患(N=10,114)のうち、悪性新生物の既往と予後に関する検討を行った。心血管疾患のステージ(BまたはC/D)と、悪性腫瘍の既往の有無で以下の4群に分けた。Group(G)1(ステージB、悪性腫瘍の既往なし、N=4,785)、G2(ステージB、悪性腫瘍の既往あり、N=630)、G3(ステージC/D,悪性腫瘍の既往なし、N=4,165) 、G4(ステージC/D、悪性腫瘍の既往あり、N=534)。 症例は平均68±12歳, 男性は70%, 悪性腫瘍の既往は12%で認め, 胃癌, 大腸癌が多かった. 悪性腫瘍の既往があるG2とG4は、既往のないG1・G3と比較し高齢で男性が多く, G4は最もBMIが低く(22.5±4.4)、収縮期血圧が低く(124.5±9.7)、心拍数が早かった(73.1±14.3)。平均3年の追跡期間でG4が最も全死亡が多かったが(26.2%), G2とG3の間に差はなかった(15.2 vs. 14.3, P=N.S.)。死因について、悪性腫瘍の既往のある症例は非心血管死が多く、なかでも癌死している症例が多かった。 本研究では心不全症例で悪性腫瘍の既往がある事は相加的に予後への影響を大きくすることを示した。また、心不全発症前のステージBであっても悪性腫瘍の既往のある症例は、心不全を発症したステージC/Dの症例の予後と相違なく厳重な経過観察が必要である。また、G2のような症例に対して薬物療法を強化することが予後改善につながるか今後の検討課題である。
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