研究課題/領域番号 |
22590577
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
本橋 豊 秋田大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (10174351)
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研究分担者 |
金子 善博 秋田大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (70344752)
佐々木 久長 秋田大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (70205855)
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キーワード | 社会格差 / 自殺 / ソーシャル・キャピタル / メンタルヘルス / 自殺対策基本法 / キャンペーン / 心理的distress / 社会貢献感 |
研究概要 |
都道府県別の社会格差と自殺率の変動の関連性を研究するため、都道府県別の一人あたりの自殺対策予算額と自殺率の関係を調べた。その結果、自殺対策基本法成立前の平成18年秋に作成された平成19年度予算では自殺死亡率と予算額に関係なかったが、平成20・21年度の予算では、自殺死亡率と予算額には有意な相関が認められた。すなわち、自殺死亡率の高い自治体では多くの予算を付けていた。また、都道府県、政令指定都市の自殺死亡率の地域差は平成18年から23年にかけて縮小傾向にあり、自殺対策の効果を示唆していた。国および秋田県が大規模な自殺対策のキャンペーンを実施した平成22年の自殺率と平成21年の自殺率を比較すると、キャンペーン実施後に自殺率の低下傾向が認められた。キャンペーンの効果として自殺率の一時的低下が認められたのかどうかについては、1回のみの社会実験であるため断言はできず、今後のさらなる検証が必要である。 ソーシャル・キャピタルが勤労者のメンタルヘルスに及ぼす影響については、職域の疫学調査に基づく研究から、以下の点が明らかとなった。事務系職場の1170名(男性75.8%)を対象に、心理的distress(KlO)とソーシャル・キャピタルとくに社会貢献感との関連性を調査した。その結果、対象とした勤労者では心理的distressは社会貢献感と関連し、しかも既知の職業性ストレス要因とは独立に心理的distressの説明要因となりうることが示唆された。以上より、メンタルヘルスの悪化要因として、社会貢献感といった認知的要因が重要であることが明らかになった。 都道府県別の自殺率には地域格差があることが知られているが、国や地方自治体の自殺対策のキャンペーン活動により、自殺率の地域格差は減少しうる可能性が示された。また、疫学調査より個人の認知的要因(社会貢献感)がメンタルヘルスに影響を及ぼすことが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
都道府県別の社会格差と自殺率の変動にキャンペーン型自殺対策が及ぼす影響については、計画どおり実施し成果を得た。社会格差がメンタルヘルスに及ぼす影響については、勤労者を対象とした疫学調査によりm順調に研究成果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の研究の進捗状況はほぼ順調であり、研究目的を達成することができた。平成24年度においては、これまでの2年間の研究結果を踏まえて、社会格差と自殺に関する系統的な文献レビューを行い、研究の最終的なせいかを要約し、今後の自殺対策への具体的な提言をまとめる。
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