研究概要 |
長時間労働により変動する心血管バイオマーカーを検索することを目的として、月間80時間以上の時間外労働(以下、長時間労働)者31例(男性29例、平均年齢32.2±5.9歳)を対象とし、一般生化学検査とCBCに加え、アディポネクチン・Matrix metallopeptidase・SD-LDL・Malondialdehyde Modified (MDA)-LDL・ホモシステイン(HOM)・高感度- CRPを測定した。さらに、同一人で月間時間外労働が80時間未満の際に再度同様な項目の測定を行い月間時間外労働80時間以上のデータと比較検討した(n=19)。1例において月間80時間以上の時間外労働後の検査で基準範囲を逸脱した人数(%)は、ADI:3人(9.7%)、MMP-9:4人(12.9%)、SD- LDL:4人(12.9%)、MDA-LDL:24人(77.4%)、HOM:3人(9.7%)、高感度-CRP:3人(9.7%)、総コレステロール:3人(9.7%)、LDL:6人(19.4%)、HDL:3人(9.7%)、HbA1c:0人(0%)、TG:11人(35.5%)、WBC:2人(6.5%)であった。また、これらの項目について、月間時間外労働80時間以上と80時間未満での同一例2回の比較検討では、MDA-LDLおよびMDA-LDLとLDLとの比(MDALDL/LDL)は月間時間外労働80時間未満で各々低い傾向(123.3±50.0 vs 109.1±51.9 U/L, p=0.077)と有意な低値(1.04±041 vs 0.88±0.37, p=0.021)を示したが他の項目では有意差を認めなかった。MDA-LDL/LDLが長時間労働後に高値を示したことは長時間労働により動脈硬化巣形成が促進された可能性が示唆された。
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