平成22年度には、医療費分析の統計的課題、医療費分布の歪みの問題とその対応法について、諸外国の文献のレビューを実施し、既存手法の整理と問題点の抽出を進めた。具体的には、多くの医療費分析で直面する医療費の分布の問題については、ブートストラップ法(non-parametric bootstrap method)や分位点回帰(Quintile regression)など、パラメトリックな統計分布を用いない手法についての文献的考察を進めた。実際のデータ分析で使用する滋賀県全市町の健診・医療曹突合データの整備について本研究の諏旨に合致するよう、一部変数の追加、変更などのデータベースに関する作業を進めた。なお平成22年9月に、データベース設計の抜本的見直しが最新手法の滴用に伴い必要とされたため、データベースの整備作業が遅延した。解析手法を事前に検討することを目的として、データベースを用いて喫煙と医療費の関連の検討を実施した。その結果、総医療費の中央値(メディアン)を観察することによって、女性40歳代及び50歳代で喫煙カテゴリの変化にともなう医療費上昇が観察きれた。一方、男性全体、女性の他の年齢カテゴリでは顕著な変化が観察されなかった。一医療費分析を実施するにあたり、集団全体の医療費の代表値として平均値、中央値のいずれを用いるかは議論が分かれるところではあるが、今回の検討は一つの端緒を示したとも言える。
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