研究概要 |
平成23年度は、前年度からの継続課題である既存文献のレビューに加え、実際に使用する統計モデルの選定とプログラムの完成、および実データに対する適用可能性について検討した。 実際に使用する統計モデルの選定については文献レビューの結果、近年の医療費解析で多用されているガンマ回帰モデル(Gammaregression model)を選択した。 実データに対する適用可能性については、ガンマ回帰モデルを統計モデルにすえたもとでの検討を実施した。具体的には汎用統計解析ソフトウェア(SAS)によって実際のプログラムを作成し、喫煙習慣と医療費との関連を検討した。喫煙習慣と総医療費との関連について性・年齢階級別に検討した結果、滋賀県全市町における健診・医療費突合データの中で、喫煙情報を有する40歳以上80歳未満の39,114人(男性:14,381人、女性:24,733人)を解析対象者とした。曝露因子として喫煙状況(非喫煙、禁煙、現在喫煙)、調整因子として年齢と収縮期血圧を投入したモデルで解析した結果、男性では65歳で非喫煙35.0万円、禁煙30.2万円、現在喫煙31.7万円などと傾向がはっきりしないものの、女性では65歳で非喫煙24.1万円、禁煙54.0万円、現在喫煙35.0万円、75歳で非喫煙46.9万円、禁煙47.7万円、現在喫煙62.1万円などと、喫煙習慣による総医療費が上昇する傾向がみられた。 本年度の検討の意義として、ガンマ回帰モデルの利用により、総医療費分布が右裾をひく問題に対処可能となったこと、年齢・収縮期血圧など他因子(交絡因子)の調整が可能となったことがあり、医療費分析の方法論的課題の解決へ向けて一歩進めることができたと言える。
|