研究概要 |
本年度は、実際にデータマイニングの手法を使い、予後予測モデルの作成を試みた。 患者を無作為にほぼ同数の二群に分け、一群で予測を立て、もう片方の群でその妥当性を検証した。Recursive partitioning analysis methodを用いて、心筋梗塞発症後30日における死亡率を予測するモデルを、最初の一群より作り、もう一群にその結果をあてはめて検討した。この予測モデルを作るために、本研究ではCART software (version 5.0, Salford Systems, CA)を用いて、入院時に収集される臨床上重要と考えられる15個の因子を使って、最初の群で予測モデルを作った。これらは、患者の背景因子(年齢、性別、喫煙の有無)、発症から入院までの時間、既往歴(狭心症、心筋梗塞、高血圧、糖尿病、高脂血症)、身体および心電図所見(BMI,Killip分類、心電図ST上昇)、最初の検査結果(血糖値、クレアチニン、白血球数)である。10-fold cross validationを行い、モデルの予測能力の評価を行った。誤分類した場合のコストは14.4と設定した。最後に、最初に群から作られた予測モデルの結果を、もう一方の群にあてはめて、妥当性の検証を行った。それぞれの点における、30日後死亡率の比較を行った。 結果 患者背景:対象は5,320名、うち2,643名の患者で予測モデルを作り、2,677名の患者で妥当性を検証した。 Recursive partitioningによる、予測モデル: Recursive partitioning解析によって、予測モデルを作成し、このモデルをもう一方のグループに当てはめ、それぞれの最終節における30日死亡率の比較を行ったところ、いずれも似た値が得られた。再還流療法の効果をもとに3群に分けて比較した結果:最終節での30日死亡率により3群に分け(低リスク:<10%、中リスク: 10-25%、および高リスク>25%)、比較を行った。高リスクのグループは高齢で、より既往症を多く持っていた。また緊急再還流療法を受けている可能性が、低リスクの患者に比べて低かった。傾向スコアで補正を行ったところ、再還流療法の効果は、中リスク群で30日後死亡と1年後死亡のいずれについても著しかった。
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