昨年度までに行った研究の結果、本研究の対象となった急性心筋梗塞患者に対し、30日後での死亡に関して再還流療法の効果を評価したところ、中程度のリスクと考えられた群に対し、最も治療効果は高いという結果となった。しかしながら、昨年度行ったデータマイニングの手法であるRecursive partitioning analysis methodを用いて解析を行った結果は、誤分類した場合のコストが変化することで、得られた結果(モデル)も大きく変わってしまうことが明らかとなった。 本年度は、これまで得られたモデルの妥当性について検討を進め、昨年度の研究で得られた結果より、分別能に優れたモデルの作成、および妥当性の検証を行い、モデルのブラッシュアップを試みた。また、昨年度用いたデータマイニングソフト(CART: Classification and Regression Trees)とは同じ理論に基づくものの、作成者の異なるソフト、あるいは、異なるデータマイニング理論に基づく解析ソフトなどを用いて、最適な予測モデルの作成を試みた。 誤分類コストの設定のみならず、解析ソフト上のさまざまな設定が異なると、得られる結果が異なり、ソフトの性能にも結果が依存する可能性が明らかになった。さらに、本研究で用いたJACCSのコホートは、2000年1月1日より2003年12月31日までに発症した急性心筋梗塞患者が対象となっている。当時と比べ、近年さまざまな新しい治療法が導入されており、薬物治療に加え新しい侵襲的な治療法の普及により、本研究の結果が、すでに現状とそぐわない可能性も否定できない。その一方で、新しい治療法の導入が、どの程度、患者予後の改善に役立っているか、明らかではない。 今後、本研究の成果を発展させ、前向きに集められた最近の新しい患者群を対象に、研究を続ける予定である。
|