研究概要 |
ヒトに感染するノロウイルス(NV)は3つの遺伝子群(GI, GII, GIV)に属している。 1997年~2009年に大阪市内出検出されたNVGII遺伝子型6(NVGII.6型)は、カプシッド領域における3つの遺伝的クラスター(アミノ酸の相同性88.8%~98.9%)に分類された。各クラスター由来のウイルス様中空粒子(VLP)は、ABO血液型の各組織血液型抗原(HBGA)に結合できない株(C1)、各血液型のHBGAと結合できる株(C2)および血液型AおよびBのHBGAと結合できる株(C3)とそれぞれHBGA結合能が異なっていた。各クラスターのHBGA近傍のアミノ酸配列を入れ替えたVLPを作出するために部位特異的変異導入を行った。各変異体をバキュロウイルス発現系で発現することによりVLPを作出できたことから、導入した変異は粒子形成に影響を及ぼさないと考えられた。これら変異体VLPを用いた抗原性およびHBGA結合能の解析は期間内に終了しなかった。 抗原性を変異させながら周期的に流行しているNVGII.2型は、HBGA結合部位のアミノ酸配列は同じであるがその周囲にアミノ酸置換の集積が認められ、流行期によってHBGA結合能が変化していた。 数年間隔で流行しているNVGI.7型およびNVGI.9型についても患者材料よりカプシッド領域を含む遺伝子を単離しバキュロウイルス発現系を用いてVLPを作出した。これらの遺伝子型については回顧的に部位特異的変異導入により各流後期に相当する変異体を作製中である。 河川等の環境や動物から検出されるがヒトからはほとんど検出報告の無いNVGIV.1型についても患者材料より遺伝子を単離しVLPを発現した。NVGIV.1型は動物から検出されることから人獣共通感染症の可能性について、作出したVLPをもちいて検討する予定である。
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