本研究では、アテローム性動脈硬化症の有力なバイオマーカー候補であるS100A12蛋白、フィブリノーゲンα断片、補体成分3断片について、追跡開始後6年以上経過したコホート研究の保存血清を用いて測定し、脳卒中、心筋梗塞の発症例、危険因子との関連を明らかにする。 22年度、保存用冷凍庫を確保し、和歌山県立医科大学公衆衛生学講座に保管してあった保存血清を岩手医科大学内に移管した。また、S100A12蛋白との相関が高く、S100A12と同時測定することにより、患者群の抽出と、頸動脈プラークの危険度をより精度高く評価できる可能性がある'補体成分3断片'について、既知の測定系の検証と新たな測定系の開発を試みた。 すなわち、現在、'補体成分3断片'の特異的な測定系はないので、スクリーニング段階で選定した12クローンのモノクローナル抗体を使って測定系を構築したが、いずれも補体成分3(C3a)とその断片のいずれも測定できなかった。そこで、市販のポリクローナル抗体Goat anti-C3a(GeneTel#OA0016)とAnti-C3a Mab(BioPorto#GAUO13-16)とを用いて、サンドイッチの系を作り、血清中の補体成分3を測定した。正常人8名の平均値は8.7μg/ml、頚動脈硬化症の患者33名の平均値は92μg/mlであった。C3aは血中で断片に分解されるが、本測定系はC3aと断片いずれにも反応することから、両者を測定していると思われる。このことから、C3a断片の特異的な測定系の構築には、ポリクローナル抗体でも十分に可能であると予想され、23年度では、補体断片のペプチドをウサギに免疫し、抗体価が上がったウサギのIgG分画を、C3aペプチドカラムで抗C3a抗体を吸収させることで、抗C3a断片特異的なポリクロ抗体を精製し、特異的な系の構築を目指す。
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