研究課題/領域番号 |
22590606
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
苅田 香苗 杏林大学, 医学部, 准教授 (40224711)
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研究分担者 |
原田 まつ子 帝京短期大学, 准教授 (60413077)
吉田 正雄 杏林大学, 医学部, 助教 (10296543)
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キーワード | 味覚閾値 / 食生活習慣 / 気分・感情状態 / 状態不安 / 飲酒 |
研究概要 |
若年者の味覚と食習慣および気分・感情状態との関連性を調べることを目的として、健常な女子短大生139名を対象に、濾紙ディスク法により、舌尖両側(鼓索神経支配領域)と軟口蓋両側(大錐体神経領域)における四基本味質(甘、塩、酸、苦味)の味覚閾値の判定を行った。あわせて、食事メニュー式栄養調査票(自記式MMITQ)により摂取栄養素量と食生活習慣を、Profile of Mood States(POMS)とThe State-Trait Amxiety(STAI)の質問票により気分・感情状態及び不安の程度を横断的に評価した。また、個人内変動を明らかにするため、短大生12名の味覚閾値、唾液アミラーゼ活性測定およびPOMS・STAI質問票を週1回、それぞれ計4回繰り返し実施し、1ヶ月間の個人内週間変動係数を算出した。 横断調査の結果、飲酒習慣(週1回以上)のある者では舌尖部の苦味閾値が飲酒習慣のない者に比べ有意に高かった。外食習慣のある者では甘味の識別閾値が集団全体の平均閾値より高くなっている者の割合が有意に多かった。POMSによる気分評価のうち、疲労得点と軟口部の酸味閾値の間に負の相関関係が認められた。味覚閾値の個人内変動係数は、軟口蓋部における甘味感度の変動が最も小さく、舌尖部における酸味感度の変動が最も大きかった。舌尖部酸味感度の週間変動の小さい者は同部位苦味感度の変動も小さかった。POMSによる気分・感情状態の各得点のうち、個人内の週間変動が最も大きかったのは、怒り・敵意得点であり、最も小さかったのは緊張不安得点であった。STAI質問票による状態不安尺度の週間変動係数は、POMSの緊張不安得点の変動係数との間に有意な相関関係がみられた。 本年度の調査より、若年女性の苦、甘、酸味への識別感度に、飲酒・生活習慣や特定の気分状態が関与していることが示唆された。今後、心理・精神的健康度や栄養状態の味覚感度に及ぼす影響をさらに追究し、健全な食生活習慣の形成や生活習慣病予防につながる味覚指標の活用性について提示したい。
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