研究課題/領域番号 |
22590606
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
苅田 香苗 杏林大学, 医学部, 准教授 (40224711)
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研究分担者 |
原田 まつ子 帝京短期大学, 教授 (60413077)
吉田 正雄 杏林大学, 医学部, 講師 (10296543)
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キーワード | 味覚 / ストレス / 気分・感情状態 / 食生活習慣 / 睡眠 |
研究概要 |
これまでに実施した横断調査・短大生139名の味覚検査結果と食事・生活習慣調査の質問票項目およびストレス関連自覚指標について多変量解析により関連性の検討を行った。また対象者28名について、ストレスマーカーとして唾液中コルチゾール、アミラーゼ活性、クロモグラニンA(蛋白量補正値)レベルの分析を10日の間隔をあけて2回行い、味覚感度や各種質問票項目との関係を調べた。今年度の調査・解析により、1)~4)の知見を得た。 1)正準相関分析により、POMSの5尺度(緊張、抑うつ、怒り、疲労、混乱)および4味質閾値の総合特性値との間に有意な相関関係が認められ、酸、苦、塩味感度の順に気分感情状態との関連性が強かった。寄与率(構造係数)は疲労、緊張、怒りで高く、特に疲労得点が高いと酸味感度が低下することが示された。 2)多重ロジスティック回帰分析の結果、酸味感度低下群に寄与する因子として、対象者の鉄と亜鉛摂取量、POMS疲労・怒り得点が、また苦味感度低下群に対しては、飲酒習慣と偏食傾向因子が選択された。 3)各唾液中ストレスマーカー値は2度の調査間で有意な相関がみられたが、POMS、STAIの各項目得点および各味覚感度との間には有意な相関関係は認められなかった。 4)生活習慣で味覚感度との間に相関がみられたのは平均睡眠時間であり、舌尖部での味覚感度は睡眠時間が少ないと低下する傾向が示された。またPOMS緊張得点とSTAI特性不安尺度は対象者の調査前日の睡眠時間との間に負の相関関係がみられた。唾液中ストレスマーカー値と各種食事・生活習慣との間に関連性はなかった。 以上の考察として、ストレスの自覚徴候がなくても生体試料中マーカーによって生理的反応として検出される可能性はあるが、特定のストレス・生理状態が味覚閾値の変動に関与しているか明確にはならず、月経周期等ほかの交絡因子の検討やストレス負荷をかけた介入研究を今後行う必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、初年度に実施した横断調査について詳細な解析を行い、若年者の味覚感度と食習慣および気分・感情状態との関連性を評価した。さらに唾液中ストレスマーカーの分析を行い、味覚感度や他因子との関係を検討し、若年者の味覚と食生活習慣や心理・精神的な健康上の問題にかかわる傍証データを集積することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策として、短大生対象の追加調査とフォローアップを実施し、質問票項目やストレス関連指標の妥当性と信頼性を検証する。いずれかに問題がある場合は、質問票を改良・改訂した上で、長期の縦断調査の実現化に向けて、既存報告データと比較可能となるような今後の調査方式について立案する。
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