研究概要 |
本研究の目的は、職域のソーシャルキャピタルを評価する質問紙の開発を行い、職場のソーシャルキャピタルが疾病休業や循環器疾患危険因子などの労働者の健康におよぼす影響について、日本人労働者を対象としたコホート研究により明らかにすることであった。日本語版ソーシャルキャピタル尺度を含む調査票を用いて、初年度調査に協力を得られた1社891名(平均年齢40.4±10.7歳、男性73.3%)の労働者を対象に2年後調査を実施した。2年後も調査票の提出があった労働者638名(追跡率71.6%)を対象に、観察開始時のソーシャルキャピタルと2年後の疾病休業について検討した。疾病休業を従属変数、ソーシャルキャピタルを独立変数としたロジスティック回帰分析を年齢と性を調整しておこなったところ、疾病休業日数5日以上(18.4%)のオッズ比はソーシャルキャピタルが高い群と比較して低い群で2.14(95%信頼区間1.38-3.30, p=0.001)であった。なお2年間でソーシャルキャピタルは低下している傾向が認められたが(p=0.08)疾病休業との関連は認められなかった。さらに健康診断データの提供協力が得られた別の1社286名(平均年齢40.4±10.7歳、男性69.6%)においてソーシャルキャピタルを含む調査票と動脈硬化関連指標として高感度CRPを測定し、労働時間、ソーシャルキャピタル、疾病休業、精神健康度(K6)等との関連を検討した。疾病休業と精神健康度は関連が認められたが、労働時間、高感度CRP、ソーシャルキャピタルとの関連は有意ではなかった。職域ソーシャルキャピタルの低いことが疾病休業のリスク要因であることが1社のみで示された。本知見についてさらなる検討が必要である。
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