研究概要 |
平成22年度予算に基づき500症例分のデータを集積した。その成果の抜粋を記す。 心血管病変の独立危険因子である尿中アルブミン量(UAE, mg/gCr)におよぼす指標と指標間の相互作用を検証した。健診受診者1705例(当学独自に集積した1205例を含む)において空腹時インスリン値(FIRI, μU/mL)およびUAEを測定して解析を行った。高血圧、脂質異常症、糖尿病に対する薬物治療を受けている症例を除いた1492例を対象に回帰分析を行った。FIRIを従属変数とした場合の説明変数はBMI(標準回帰係数(以下同様)0.263)、体脂肪率(0.104)、ALT(0.174)、中性脂肪(0.081)であった。性別、血圧、AST、γGTP、コリンエステラーゼ、TC、HDL-C、LDL-C、HbA1c、尿酸、腹囲、eGFRは説明変数として選択されなかった。UAEを従属変数とした場合の説明変数として選択されたのはFIRI(0.132)と腹囲(0.085)であった。性別、BMI、体脂肪率、血圧、肝機能、脂質、HbA1c、尿酸、eGFRは説明変数として選択されなかった。一方、内臓脂肪蓄積の指標である腹囲を従属変数とした場合の説明変数としては多岐にわたる指標が選択された。 上記の結果をもとにUAEの上昇機序を考察すると1)先ず全身的な脂肪の蓄積とALTの上昇をきたし、2)これによるFIRI上昇が惹起され、3)引き続いて進行する腹囲の増大とさらなるFIRIの上昇に伴いUAEの上昇が始まるという疾病の進展モデルが考えられる。通説と異なり、動脈硬化の最上流は内臓脂肪ではなく、肝機能指標ALT(GPT)の軽度上昇と空腹時インスリン値の上昇であることが明らかとなった。これらの研究成果は平成23年度中の学会にて発表予定である。
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