複数の学会発表および二編の論文(第一報掲載済、第二報投稿中)に加え、第56回日本糖尿病学会および第49回欧州糖尿病学会(スペイン)で最終的な研究成果の発表を行い、第三報として論文投稿する予定である。 1)動脈硬化と糖尿病発症の予測指標リスクスコアとして欧米で普及しているFinnish Diabetes Risk Scoreを日本人向けに改良し、Japanese Diabetes Risk Score (JPDRISC)の作出に成功した。JPDRISC 6.5点以上の日本人は2.2年間の観察期間における糖尿病発症リスク(Odds比)が5.2倍に達する。 2) しかし同スコアは動脈硬化性疾患の予測指標である尿中アルブミン排泄量(UAE)へ統計学的に有意に関与するがその直接的影響力は弱かった。むしろ平均血糖値の指標であるHbA1cの上昇を介してUAEを増加させる事が明らかとなった。 3) 脂肪肝の指標は上記スコアに含まれていないが、脂肪肝指標のコリンエステラーゼ(ChE)が369U/l以上である事が、上記リスクスコアと独立して糖尿病発症リスク(Odds比)を4.1倍にも増加させる事が明らかとなった。 従って健診などで“経年的に”JPDRISC 6.5点以上、コリンエステラーゼ(ChE)が369U/l以上への上昇に加えてHbA1cや空腹時血糖値の漸増を伴った症例こそが最も糖尿病と動脈硬化症のリスクが高い。その症例のUAEが10mg/gCr以上であるならばアンギオテンシンII拮抗薬投与で予後改善を期待できる。 上記の成果を無駄にしないためにも当該指標の有用性は前向き研究で検証する必要がある。なお、予備的調査により空腹時血糖値上昇にグルカゴンが深く関わる事が明らかになった。上述の経時的悪化プロセスを断ち切るためにグルカゴンの上昇を防止する方策を探る事も今後の喫緊の戦略的課題である。
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