研究概要 |
本研究は地域医療連携体制の中での回復期心筋梗塞患者の心血管イベント再発予防(2次予防)戦略の構築を目指すものである。とくに心筋ストレスマーカー(BNP),LDLコレステロール(LDL c),腎機能指標(血清クレアチニン)がフォローアップ期間中に各種ガイドライン基準をどの程度満たしているか,という遵守状況と発症1年後の心血管イベント発症との関連に注目することは研究実施計画に記した。このため平成22年度は,心筋梗塞に限らず当施設の冠動脈疾患患者全般の脂質プロフィールの管理状況(「動脈硬化ガイドライン2007」(以下ガイドライン)に準拠)を調査した。具体的には初回経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後に冠動脈イベント再発の既往のある171名の患者で,PCI後3か月間のLDLc低下率と冠動脈イベント再発までの期間が関係するかを見たところ,両者の間にf=0.64の有意な正相関が認められた。さらに5年以内の再発の有無で分けると,再発あり群は再発なし群に比し初期3か月間のLDLc低下率は有意に小で,3か月時点でのLDL cガイドライン基準達成率は低率であった。多くの症例で脂質管理のためスタチンが用いられていたが,この調査からは初回冠動脈疾患ののち短期間(3か月)にいかに厳格にLDL cを低下せしむるかが長期的な心血管イベント再発予防に密接に関連することが示されたため,我々はこれを論文化した(J Pharm Pharmaceut Sci 2010;13:254-62)。 平成23年度以降は上記知見をもとに,心筋梗塞パス患者の「医療者用パス表」(連携登録医より発症1年後に回収)に記載されたLDLc値にて解析を行う。またBNPなど他のバイオマーカーについても,経過中にみられる変動が心血管イベント(調査期間は1年間であるが)に及ぼす影響につき検討する予定である。
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