研究概要 |
平成24年に日本腎臓学会は、タンパク尿(アルブミン尿)と心血管疾患(Caridiovasucular disease: CVD)の合併リスクを重視した新たなCKD重症度分類を公表した。これは大きなパラダイムシフトである。そこで労働者集団での、この新しい重症度分類を基にしたCKDの分布と、その発症および進行に関与する要因の同定を行った。 2009年に35~64歳で、健康診断で血清クレアチニン(Cr)の検査を受け、2003年にも血清Crの検査を受けていた男性3,964人、女性2,698人の労働者について2009年でのCKD重症度の分布を調べた。タンパク尿の頻度は男性2.9%、女性1.1%であった。全CKDは男女とも16%であったが、CVDリスクの高い中等度、重度のCKDは数は少ないが男性に多く、55~64歳の男性では3.3%であった。このことは、CKDが急速に高齢化する日本の労働者集団へ大きなインパクトを与えることを示唆する。 一方、6年間のタンパク尿の発現に高血圧、糖尿病、肥満と喫煙が関連した。全CKDの発現には年齢、肥満と高中性脂肪血症が関連し、高血圧、糖尿病と喫煙は関連しなかった。しかし、中等度および高度のCKDの発現には、先行する軽症CKDの症状(eGFR低下、タンパク尿)とともに、高血圧、糖尿病、喫煙が関連した。このことから、CKDの発症と重症化には高血圧や糖尿病と、肥満や喫煙などの生活習慣がともに関連し、これらの治療や改善が職場でのCKDおよびCVD予防対策として特に重要であることが示唆された。 なお、この研究では保安、農業、清掃などの作業に関わることがCKDの発症と進展に関与することを示唆する所見も得られた。
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