本研究は、定住したアラブ系遊牧民(ベドウィン)を対象に、フィールド調査により人口再生産、生産、消費に関する体系的データを収集し、長期間にわたる定住化の過程における定住ベドウィンの人口再生産メカニズムを明らかにすること、人口再生産・生産/消費の視点から、今日急速に近代化が進行するアラブ農村社会が直面する諸問題の原因を明らかにし、その解決のための方策を示すこと、そして定住ベドウィンの生存様式を理解しながら、持続可能な開発計画を策定するための基礎資料を提供することを目的としている。 今年度は、3年を期間とする本研究の最終年度であり、本研究の基盤となる人口再生産の分析に必要な系譜人口データの収集および精査を集中的に行った。具体的には、年2回実施したフィールド調査において、調査開始前に部族長および宗教指導者を対象とした説明会を開催し、調査協力を得た。その後、調査対象とする2クラン(Al-BawartおよびAl-Ashushu)のメンバー述べ16名からこれまで作成した家系図の齟齬に関するチェックを行うとともに、不明な点はその都度電話や個別訪問により追加・修正する作業を行った。 また、市民旅券局(Civil services & passport)において、イギリス統治時代の出生・死亡記録(1900年代初頭の記録)、および結婚により転出した女性の名前のリストを入手し、データの信頼性を高めた。 本研究では、Al-Bawartクランは3000名、Al-Ashushuクランは7000名を超えるデータを収集しており、アラブ・イスラーム社会における長期的な人口再生産メカニズムを明らかにするためにきわめて貴重な資料となったと考える。
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