研究課題/領域番号 |
22590618
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
久保 達彦 産業医科大学, 医学部, 講師 (00446121)
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キーワード | 産業医学 / 交替制勤務 / 生活習慣病 / 前立腺がん / 体内時計 / 職域がん検診 / 健康保険組合 / レセプト |
研究概要 |
交替制勤務は生産効率や社会福祉サービスの向上等を目的として幅広い産業分野において採用されており、本邦では労働者の17.9%(約1180万人)が深夜業を含む交替制勤務あるいは深夜業に従事していると報告されている。不規則な生活習慣を強いられる交替制勤務者においては予てより睡眠障害、消化器疾患、循環器疾患等のリスクが報告されているが、近年、悪性新生物(がん)のリスクが報告されるようになり特に注目を集めている。しかしながらそのエビデンスは未だ充分とは言えず、とりわけヒトを対象とした疫学研究によるエビデンスの拡充が希求されている。 本研究は交替制勤務従事に伴う悪性新生物リスクを含む疾病リスクについて、日本企業が保有する健康データ(定期健康診断結果及び健康保険組合が保有するレセプトデータ等)を利用して精度の高い情報に基づき既存の研究では得られなかった質の高い疫学的評価を実施することを目的にしている。研究では5年間の労働者健康状態の追跡を行う計画であり、追跡期間2年目にあたる本年も計画に則り調査を継続している。一般的に企業が保有する健康情報に研究者がアクセスすることには大きな困難が伴うが、今回の研究では研究実施機関である産業医科大学と研究協力企業の信頼関係に基づきそれを実現したことにより、長期間に渡る正確な交替制勤務就業履歴が把握され、また対象者が同一企業の従業員であるため交替制勤務者と日勤者の社会経済的要因の差が結果に与える影響が比較的小さい等の既存の研究にはない研究評価上の利点が得られている。 本年度の学術成果としては同コホート研究による研究成果が9件の演題として学会発表された。そのうち4件は国際学会による発表で(うち2件はoral presentationに選定)、9件のうち3件が招待講演であった。また2件の原著論文が産業衛生分野の権威ある国際専門誌にアクセプト(1件)・掲載(1件)された。次年度以降も引き続き研究者と研究対象である研究協力企業との信頼関係を維持、発展させて追跡調査を継続していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の通りに、研究者と研究対象である研究協力企業との信頼関係に基づいてコホートの追跡調査が実施されているため。また今年度までに得られた成果が国際学会でoral presentationの指定を受けて発表され、また産業衛生分野の権威ある国際専門誌に原著論文として掲載されたため。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に大きな変更はない。引き続き当初計画に基づき悪性腫瘍リスクを含む交代制勤務者の疾病リスクに関する質の高い疫学的エビデンスを日本人を対象として得ることを目的に研究を推進していく。
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