研究実績の概要 |
交替制勤務とは職場で個人が就労し続けることができるよりも長い操業を実現するめに勤労者が次々に交代で就労する勤務時間編成方法であり、生産効率や社会福祉サービスの向上等を目的として幅広い産業分野において導入されている。本研究は、交替制勤務従事に伴う生活習慣病リスクについて、悪性腫瘍リスクを含めて日本企業が保有する健康データ(定期健康診断結果及び健康保険組合が保有するレセプトデータ等)を利用して質の高い疫学的評価を実施することを目的として実施された。今年度の学術成果としては2報の論文が雑紙掲載され、5件の演題が学会発表され、1冊の書籍が分担執筆された。学会発表については、5件すべてがoral presentationで、うち4件が招待講演であった。 原著として発表された論文では厚生労働省が実施する労働安全衛生特別調査(労働者健康状況調査)と総務省が実施する労働力調査をもとに,我が国の深夜交替制勤務者数の推計を行った。本邦では雇用者に占める深夜業従事者割合は、平成9年13.3%,平成14年17.8%,平成19年17.9%,平成24年21.8%と一貫して増加していた。また最新調査年である平成24年においては1200万人の労働者が深夜業に従事していると推計された。 また20th World Congress of Epidemiologyでoral presentationとして採択された研究報告では、交替制勤務者における耐糖能異常症(糖尿病)リスクと高血圧症リスクが同一集団において同時に検討された結果、高血圧症は二交代勤務者よりも三交代勤務者において、耐糖能異常症は三交代勤務者よりも二交代勤務者において、より発症リスクが高いことを報告した。この研究によって、“最適なシフトスケジュール”はアウトカムによって異なるという可能性が初めて示唆された。
|