高度高齢社会においては公助のみで高齢者を支えることは困難であり、地域住民自らが健康支援事業を担っていくことが求められる。種々の意識調査によると「健康」は常に高齢者の関心が高い項目として挙げられている。そこで、本研究では「健康」と「住民参加」をキーワードとして社会基盤再構築のための地域システムを再構築するためのモデル事業を行い、その効果について心身両面から検証すること、及び研究成果を踏まえて住民のエンパワーメントを目的とした事業策定・実行・評価のためのマニュアル作成を試みることを目的としている。 平成22年度研究では福岡県内の2地域(行橋市、みやこ町)において、高齢者の日常生活圏域ニーズ調査を郵送法により行った(各々3500件と8000件)。その結果を踏まえて中学校区別の地区診断を行い、それを地域住民に地域ワークショップ等の機会を通じて報告し、地域の集会所を場とした健康づくり事業をモデル的に開始した。平成22年度研究では、日常生活圏域ニーズ調査の分析結果として、運動及び閉じこもりで問題のあると診断された地区において運動器機能向上プログラムを行っている。参加者については体力テストに加えてSF36による健康度の評価を行った。介入による体力及び健康意識における改善が観察された。さらに高知市の「いきいき百歳体操」や鹿児島県鹿屋市の「やねだん地区」における住民参加型の活動の先進事例の資料収集と分析を行った上で、モデル事業終了後も事業が継続的に運営されるための枠組みとして、民生委員が「お世話役」となり、講座修了生のうち比較的若い参加者(40代から50代)がインストラクターとなって活動する仕組み作りを行っている。各地域の特性を踏まえたうえで、活動が継続的に行われるための条件について、意見調査や地域ワークショップの結果を踏まえて整理し、平成23年度研究においてマニュアル作成を試みる。
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