研究課題/領域番号 |
22590620
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
沖津 祥子 東京大学, 大学院・医学系研究科, 客員研究員 (10082215)
|
キーワード | ウイルス / 小児 / 胃腸炎 / アジア / 分子疫学 / 人獣共通感染症 |
研究概要 |
1. 2003~2009年の日本での小児急性胃腸炎原因ウイルスであるサポウイルスの遺伝的特徴を調べた。4.1%で検出され、主として冬期(11から3月)であった。GI.1の頻度が最も高いが、年度により全く異なる遺伝子型がはやることがあった。2. 2006-2009年日本で小児の急性胃腸炎の原因ウイルスであるノロウイルスの解析を行った。15~27%が陽性であった。流行の遺伝子型はGII.4がほとんどでさらにすべてがGII.4/2006b変異型であった。3. この期間のロタウイルスの解析ではG1P[8]遺伝子型が63%であったが、G3P[8]の割合が増加した。4. 近年発見された新しいウイルスの検出をタイの急性胃腸炎患者検体から試みた。入院小児の検体からピコルナウイルス科のsaffold virusを、cosavirusを成人の検体から検出した。また、パルボウイルス科のボカウイルスを検出した。どれも多くは共感染であった。5. 10種類の下痢症ウイルスを同時に1本のチューブの中で検出するmultiplex-PCR法を開発した。下痢症の原因ウイルスは種類が多く、検出には時間がかかるが、それを簡略化するために考案し、実際の検体を用いて有用性を明らかとした。6. 市販のノロウイルス・イムノクロマトキット、ロタウイルスのイムノクロマトキットの評価を行い、集団感染での対応が可能であることを示した。7. 日本、タイで検出されたブタコブウイルスのVP1領域の解析を行った。これまでに知られていたハンガリーや中国の株のVP1領域に比べて変異に富んでいた。また、3D領域の検索からウシコブウイルスに近いと報告されていた1株のVP1領域は他のブタコブウイルスの株と類似しており、ブタコブウイルスでの組換えの存在が予想された。 これらの結果はいずれも今年度論文として発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本における小児急性胃腸炎患者検体からのウイルス検索を行い、流行の把握を行うことができた。主たる下痢症ウイルス以外のウイルスに関してタイの検体を用いて、検出を行うことができた。タイの仔ブタ検体から検出したブタコブウイルスについてVP1領域の解析を行い、論文としてまとめることができた。血清中のプタコブウイルスの検出を行うことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
日本、アジアでの小児急性胃腸炎の起因ウイルスの流行調査を継続する。ブタ正常血清から検出したブタコブウイルスの株についてVP1領域の解析をする。すでに報告したブタロタウイルスP[23]の株について全ゲノム解析を行い、さらに詳細な検討を行う。それとともに2010年、2011年のタイの仔ブタ下痢症検体を入手したので、引き続きウイルスの流行の解析を行う予定である。
|