1.2010~2011年、タイ・チェンマイでウイルス性下痢症の分子疫学を行った。411便検体中50%が陽性、ノロウイルスGIIが16%、A群ロタウイルスが15%、ヒトボカウイルスが6%、アデノウイルスが5%、エンテロウイルスが4%、ヒトパレコウイルスが1%であった。アストロウイルス、サフォルドウイルス、サポウイルス、アイチウイルス、コサウイルスは1%以下であった。ロタウイルスはG1P[8]が45%、G9P[8]が36%であった。ノロウイルスはGII/4の2010変異型が多数を占めた。2.2011~2013年、日本のウイルス性下痢症の分子疫学を731便検体で検討した。63%が陽性で、ノロウイルスが40%、ロタウイルスが10%、ヒトボカウイルスが10%、パレコウイルスが8%、エンテロウイルスが7%、アストロウイルスが5%、サポウイルスが4%、サフォルドウイルスが1%であった。ノロウイルスはGII/4が優勢で、特に2012年晩期では2012変異型が多く見られた。P2領域の4つのアミノ酸に置換が見られた。ロタウイルスはG1P[8]が54%、G3P[8]が36% 、G9P[8]が3%、G3+G9P[8] が3%、G3P[4] が2%、G1+G3P[4] が1%検出された。3.タイの198例の小児下痢症患者便検体でロタウイルス、アデノウイルス、ノロウイルス抗原同時検出キットの評価を行った。PCRと精度は同等だが感度がノロウイルス、アデノウイルスで低かった。4.チェンマイの下痢症の仔ブタのA群ロタウイルス4株について、全11ゲノムの解析を行った。遺伝子型間、遺伝子型内での遺伝子再集合が観察された。一方、遺伝子分節によっては約20年前の株の遺伝子が保存されていた。まれなNSP3 T7遺伝子型がタイで初めて検出され、これはこの遺伝子型がブタ由来であることを支持する結果であった。
|