研究概要 |
本研究は、子どもにおける化学物質曝露に着目し、一般生活環境中で広範に使用され、神経毒性や内分泌かく乱作用を有する殺虫剤(有機リン系、ピレスロイド系)、難燃剤(有機リン系)および可塑剤(フタル酸系)を対象として、これらの一般子どもへの曝露レベルと吸収量を把握することを目的とする。 一般に体内に吸収された化学物質の量は、尿中に排泄されるその代謝物量により把握される。平成23年度は、ピレスロイド系殺虫剤の市場調査等により、子どもが日常生活で曝露される可能性の高い薬剤種を選定し、これらの各尿中代謝物の分析方法を確立することを当初計画していた。しかし、最近住宅内での使用が増加している含フッ素ピレスロイド剤については、その代謝物が明らかでないものがいくつか存在することか判明した。昨年度はそれらの尿中代謝物を動物実験により同定した。 3種の含フッ素ピレスロイド剤トランスフルトリン、プロフルトリンおよびメトフルトリンをそれぞれSD系雄性ラットの腹腔内に投与し、投与後24時間内に排泄される尿中の代謝物をガスクロマトグラフィー/質量分析により同定した。トランスフルトリン投与ラットより3種(2,3,5,6-テトラフルオロベンジルアルコール、2,3,5,6-テトラフルオロ安息香酸、3-(2,2-ジクロロビニル)-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボン酸)、プロフルトリン投与ラットより4種(4-メチル-2,3,5,6-テトラフルオロベンジルアルコール、4-メチル-2,3,5,6-テトラフルオロ安息香酸、4-ヒドロキシメチル-2,3,5,6-テトラフルオロベンジルアルコール、2,2-ジメチル-3-(1-プロペニル)-シクロプロパンカルボン酸)、メトフルトリン投与ラットより3種(4-メトキシメチル-2,3,5,6-テトラフルオロベンジルアルコール、4-ヒドロキシメチル-2,3,5,6-テトラフルオロベンジルアルコール、2,2-ジメチル-3-(1-プロペニル)-シクロプロパンカルボン酸)の代謝物がそれぞれ尿中より同定された。
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