研究概要 |
一般に体内に吸収された化学物質の量は、尿中に排泄されるその代謝物量により把握される。平成23年度、最近住宅内での使用が増加している3種の含フッ素ピレスロイド剤(トランスフルトリン、プロフルトリンおよびメトフルトリン)の尿中代謝物を動物実験により同定した。 平成24年度は、同定された各尿中代謝物の分析方法を開発するとともに、トランスフルトリン曝露における吸収量の指標として適切な尿中代謝物について検討した。 同定された合計8種の代謝物の分析方法を検討した。尿中代謝物の抱合体を加水分解した後、トルエンで抽出した。代謝物を誘導体化(トリメチルシリル化またはtert-ブチルジメチルシリル化)し、ガスクロマトグラフィー/質量分析により定量した。各代謝物は20μg/ml以下の尿中濃度において正確に再現性よく定量可能であった(定量下限濃度:0.01-0.03μg/ml)。採取した尿試料は1ヵ月間冷凍保存可能であった。 トランスフルトリンをラットの腹腔内に投与(26、64、160及び400mg/kg)した後、経時的に1週間採尿した。尿中に排泄される3種の代謝物(2,3,5,6-テトラフルオロベンジルアルコール、2,3,5,6-テトラフルオロ安息香酸、3-(2,2-ジクロロビニル)-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボン酸)を上記の方法により定量し、その体内動態を薬物動力学的に解析した。各代謝物排泄量の投与量に対する割合、各代謝物の平均体内滞留時間はいずれの代謝物においても投与量による差は見られず、広範な曝露濃度範囲において、曝露量と各代謝物尿中排泄量との間に線形性が認められた。2,3,5,6-テトラフルオロ安息香酸はトランスフルトリンに特徴的な代謝物であり、またその尿中排泄量は投与量の約50%を占めることから、トランスフルトリン曝露における最も適切な曝露指標となり得ると推定された。
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